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「AIに何をさせるか」より、「どこで仕事が止まっているか」
AI導入の入口になる業務Discoveryの考え方。
この記事の要点
- 「AIに何をさせたいか」を最初に決めようとすると、答えの出にくい問いになります。
- 代わりに、仕事が「止まる」「待つ」「戻る」「探す」場所を見つけます。そこがAI導入の入口の候補です。
- 見つける作業は、相談する側の宿題ではありません。話を聞きながら一緒に見つけていくものです。
AIを使って業務を良くしたい、という話の最初に、「では、AIに何をさせたいですか」と聞かれることがあります。もっともな質問に見えます。けれど、この問いにすぐ答えられないのは自然なことです。
AIに何ができるかを詳しく知らなければ、何をさせるかは決められません。そして、それを詳しく知っているべきなのは、本来は相談を受ける側です。
その問いが答えにくい理由
「AIに何をさせるか」は、仕事をAIの機能の言葉に翻訳したあとの問いです。翻訳する前の仕事の姿が見えていないと、答えは「なんとなく便利そうなこと」になります。
たとえば「書類作成をAIに任せたい」という答えが出たとします。ところが、実際に時間がかかっているのは書類を書くことではなく、書くための情報を各部署から集めることかもしれません。書く部分を速くしても、集める部分で待っている時間はそのまま残ります。
だから、問いの順番を変えます。何をさせるかの前に、仕事がどこで止まっているかを見ます。
仕事が止まる場所を見つける
仕事の流れの中で、手がかりになるのは次の4つの場所です。
止まる
次の人に渡ったはずの仕事が、そこで動かなくなる。承認待ち、確認待ち、担当者の不在などです。
待つ
必要な情報がそろうまで、手を付けられない。「あの数字が来ないと見積が出せない」といった状態です。
戻る
一度渡したものが、不足や間違いで差し戻される。同じやりとりが二往復、三往復する。
探す
どこに何があるか、誰に聞けばいいかが分からず、探すこと自体が仕事になっている。
こうした場所は、日々の会話の中に「あれ、どうなってる?」「誰が持ってる?」という形で現れます。その言葉が出る場所が、入口の候補です。
見つけることを、宿題にしない
「まず社内で業務を整理してから相談してください」と言われると、相談のハードルは一気に上がります。整理する時間がとれないこと自体が、困りごとの一部であることもあります。
仕事が止まる場所は、話を聞きながら一緒に見つけられます。今日の仕事を最初から順に話してもらう。どこで待ったか、誰に何を聞いたかを、思い出せる範囲で話してもらう。それだけで、止まる場所はかなり見えてきます。
相談する側が、AIに任せる範囲をあらかじめ決めておく必要はありません。
それは、止まる場所が見えたあとに、一緒に考えることです。
具体例:見積が遅れる、という困りごと
説明のための想定の場面です。「見積の作成に時間がかかる」という困りごとがあったとします。AIに見積書を書かせる、という発想がまず浮かぶかもしれません。
流れを順に聞いていくと、たとえば次のような姿が見えることがあります。営業がお客様の要望をメモにとる。そのメモをもとに、製造に仕様と原価を確認する。製造は別の案件の対応中で、返事が翌日になる。返ってきた内容に不足があり、営業がもう一度お客様に聞き直す。
この場合、時間がかかっているのは「書く」ことではありません。「待つ」と「戻る」です。最初の聞き取りで確認すべき項目がそろっていれば、戻りは減らせるかもしれません。製造への確認がどこで止まっているかが見えれば、待ちの長さも分かります。AIが役に立ちうる場所は、ここで初めて具体的になります。
HillsJapanの考え方
HillsJapanは、繰り返し発生している業務の中からAIが支援できる範囲を見つけ、人の判断を残した形に業務を設計し直すことを、業務のAI活用支援として扱っています。
その最初の一歩が、仕事が止まる場所を見つけることだと考えています。技術の構成を先に決めることはしません。どこに時間がかかっていて、どこを人が判断したいのかを整理するところから始めます。
見つけた場所のすべてをAIで埋める必要もありません。止まる理由が「判断が要るから」なら、そこは人が判断する場所として残し、判断に必要な材料をそろえる部分を支える、という形もあります。