AIに全部任せなくていい

Human Approvalを残した業務設計。

この記事の要点

  • AI導入を「全自動化」と考えると、任せられない部分の多さに行き詰まります。
  • AIが材料をそろえ、候補を示し、人が確認して判断する。この分担なら、AIに支えてもらえる範囲は広がります。
  • 金額・日程・条件など、責任を伴う判断は人が確認する。これをHuman Approvalとして業務の流れに組み込みます。

AIを導入するなら、その仕事はもう人がやらなくてよくなるはずだ。そう考えると、AI導入の話は急に難しくなります。

お客様への回答、金額の提示、例外の判断。どれも、間違えたときの責任が伴います。全部をAIに任せるのは怖い。だから導入できない。この結論に行き着くのは、自然なことです。

けれど、その前提を一つ外すと、景色が変わります。AIに全部任せなくていい、という前提です。

「支える」と「判断する」を分ける

一つの仕事の中には、性質の違う作業が混ざっています。情報を集める、整理する、下書きを作る、候補を並べる。そして、それを見て決める。

前半の作業は、AIが支えやすい部分です。最後の「決める」は、責任を持つ人が担う部分です。仕事を丸ごと任せるかどうかではなく、仕事の中のどこまでをAIが支え、どこから人が判断するかを分けて考えます。

AIは判断の材料や候補を示す。重要な判断、承認、責任は人が持つ。この分担を最初から設計に入れておくと、「全部任せられないから導入できない」という行き詰まりを避けられます。

Human Approvalとは何か

Human Approvalは、AIの提案を人が確認し、判断する工程のことです。業務の流れの中に、あらかじめその場所を作っておきます。

どこに置くか

責任を伴う判断の手前に置きます。金額、日程、条件、例外の扱い、外部への約束。AIがこうしたことを勝手に決めたり、約束したりしない形にします。

何を人に見せるか

判断する人が、短い時間で判断できる形にまとめて見せます。何が決まっていて、何が未確定か。AIが何を根拠に提案したか。

判断の結果をどう残すか

人が判断した結果は、次の判断の材料になります。同じ種類の判断が繰り返されるなら、その基準を書き残すことで、AIが示す候補も確かなものに近づけられます。

全自動化を目標にしない理由

全自動化を目標にすると、例外が出るたびに仕組みを作り直すことになります。現実の仕事に、例外はつきものです。例外を全部AIに扱わせようとすると、仕組みは複雑になり、どこで何が決まったのかが見えにくくなります。

Human Approvalを残した設計なら、例外は人の判断へ回せます。AIが扱うのは、繰り返しの多い、判断の手前の部分です。仕組みは小さく保てますし、人が判断した記録も残ります。

AIを使う部分が少なく見えるかもしれません。けれど、確実に任せられる部分から使い始めて、確かめながら広げる方が、結果として長く使える仕組みになると考えています。

具体例:問い合わせへの回答を作る仕事

説明のための想定の場面です。お客様からの問い合わせに、担当者が回答を作っている仕事を考えます。

全部をAIに任せる場合、AIが問い合わせを読み、回答を作り、そのまま送ります。速いかもしれませんが、価格や納期に触れる回答まで、誰の確認も経ずに外へ出ていきます。

Human Approvalを残す場合、AIは問い合わせを読んで種類を分け、関係する資料を探し、回答の下書きを作ります。担当者は下書きと根拠を見て、直すべきところを直し、送るかどうかを決めます。定型の質問と、価格や例外に触れる質問とで、確認の重さを変えることもできます。

担当者の仕事は「一から書く」から「確認して決める」に変わります。そして、外へ出る言葉には、必ず人の判断が通っています。

HillsJapanの考え方

HillsJapanは、AIの提案を人が確認し判断する工程を含め、任せる範囲を明確にする業務設計を扱っています。

AIは補助。判断・承認・責任は人が持つ。

これは、HillsJapanが研究開発の中で大切にしている考え方でもあります。

任せる範囲は、最初から決めておくものではありません。仕事の流れを見て、どこが判断の手前で、どこが判断そのものかを分けたうえで、一緒に決めていくものだと考えています。

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