Journal / Series 03 人とAIの役割分担 /
小さく試すAI導入
いきなり全社システムを作らない理由。
この記事の要点
- 最初から全社の仕組みを作ると、確かめる前に多くのことを決めることになります。
- 一つの業務、一つの流れに絞って、小さく動くものを作り、実際の仕事で確かめます。
- 確かめた結果をもとに、広げるか、直すか、やめるかを決めます。やめる判断も、試したからこそ得られる結論です。
AIを導入すると決めたとき、せっかくなら全社で使える仕組みを作りたい、と考えることがあります。各部署の業務をまとめて、一つの大きなシステムにする。
気持ちは分かります。けれど、AI導入の最初の一歩としては、遠回りになることがあります。この記事では、小さく試すことを勧める理由を書きます。
大きく始めると、確かめる前に決めることになる
全社の仕組みを作るには、各部署の業務を先に全部決める必要があります。どの情報をどう扱うか、誰が何を承認するか、例外はどうするか。
ところが、AIが実際の仕事でどう働くかは、動かしてみるまで分からない部分があります。想定していなかった質問が来る。資料の書き方がばらばらで、思ったように参照できない。現場が使う時間帯に、確認する人がいない。
大きく始めると、こうしたことが分かったときには、すでに多くのことが決まっています。直すための手戻りも、大きくなります。
小さく試すとは、何を小さくするのか
小さく試す、というのは、手を抜くことではありません。確かめる範囲を絞ることです。
業務を一つに絞る
部署全体ではなく、一つの業務に絞ります。たとえば「問い合わせの一次対応」や「見積前の情報集め」のように、始まりと終わりがはっきりしているものを選びます。
使う人を絞る
最初から全員に使ってもらうのではなく、その業務を実際にしている人に使ってもらいます。違和感や不足に、いちばん早く気付ける人たちです。
確かめることを決める
何が分かれば次に進めるかを、先に決めておきます。「この種類の問い合わせに、参照箇所つきで答えられるか」「担当者の確認にどれくらい手間がかかるか」といった形です。
確かめて、広げるか、直すか、やめるか
小さく動かしたら、実際の仕事の中で確かめます。うまく働いた部分、働かなかった部分、そもそも想定と違っていた部分が見えてきます。
そのうえで、次を決めます。うまくいった範囲を少し広げる。働かなかった部分を直して、もう一度試す。あるいは、この業務にはAIよりも別のやり方が合う、と判断してやめる。
やめる判断は、失敗ではありません。
大きな仕組みを作ってから気付くより、小さく試した段階で気付ける方が、かかる手間はずっと小さく済みます。
具体例:社内の問い合わせ対応を小さく試す
説明のための想定の場面です。社内の手続きについての問い合わせが、総務の担当者に集まっているとします。全社のナレッジ基盤を作る前に、小さく試すとしたら、次のような形が考えられます。
対象を「勤怠の手続き」についての問い合わせだけに絞る。参照する資料は、最新の手続き書だけにする。使う人は、一つの部署のメンバーに限る。確かめることは、資料のどこを根拠に答えたかが示されるか、資料に無い質問のときに担当者へ回せるか、の2つにする。
しばらく使ってみて、参照が合っていれば、対象の手続きを増やす。資料の書き方が原因で参照がずれるなら、資料の方を整える。こうして、確かめた範囲だけが、少しずつ広がっていきます。
HillsJapanの考え方
HillsJapanは、AI導入の進め方を、ヒアリング、業務整理、PoC(試作・検証)、実装、運用改善という段階で考えています。PoCでは、まず小さく動くものを作り、自社の業務に合うかを本番の前に確かめます。
全社の仕組みは、小さく確かめた結果が積み重なった先にあるものだと考えています。最初から全体を設計するのではなく、一つの業務で確かめたことを土台に、次の業務へ広げていきます。
小さく試す範囲の中でも、Human Approvalは残します。試している段階だからこそ、外へ出る判断は人が確認する形にしておきます。