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「それ、ChatGPTでいいじゃん」と言われるたびに思うこと
私たちは現在、AIを使った電話受付やWeb相談の仕組みを開発しています。
この話をすると、時々こう言われます。
「それ、ChatGPTの音声機能を使えばいいじゃん」
確かに、今のAIは驚くほど自然に話します。
こちらが話せば理解して、かなり自然な言葉で返してくれる。
だから一見すると、
「電話とAIをつなげれば完成」
に見えるのかもしれません。
でも、実際に企業がお客様へ提供するAIを作ってみると、難しいのはそこではありませんでした。
ChatGPTは、あなたの会社のことを答えられるだろうか
私はそんなことを言われると、逆にこう聞くことがあります。
「じゃあ、そのChatGPTは、あなたの会社のことをお客様に答えられますか?」
営業時間や住所を答える、という程度の話ではありません。
「このサービスは自分の場合も利用できますか?」
「前に相談した件の続きを話したいんですが」
「Webにはこう書いてあるけど、これはどういう意味ですか?」
「このケースは誰に相談すればいいですか?」
実際のお客様から来る相談は、きれいなFAQではありません。
事情が途中までしか分からなかったり、質問そのものが曖昧だったり、会社として答えてよい範囲と、人間が判断しなければならない範囲が混ざっています。
そして何より怖いのは、
AIが自然に話せることと、会社として正しいことを話せることは別だ
ということです。
むしろ今のAIは非常に自然に話せるからこそ、間違った回答まで「それらしく」聞こえてしまいます。
社内で使うAIと、お客様に出すAIは違う
自分で使うAIなら、
「あ、それ違うよ」
で済みます。
多少勘違いしても、こちらが訂正すればいい。
しかし、お客様の電話に出るAIではそうはいきません。
そのAIが話した瞬間、お客様にとっては、
「HillsJapanがそう言った」
になるからです。
ここが、私たちが開発していて一番大きく感じた違いでした。
AIモデルの性能だけを見ていると、
「もう十分賢い」
と思います。
ところが企業の外へ出した瞬間、
「何を知っているのか」
だけでは足りません。
「何を根拠に答えたのか」
「どこまで答えてよいのか」
「分からないときにどうするのか」
「誰へ引き継ぐのか」
「前の相談をどう扱うのか」
そんな問題が一気に出てきます。
「分からない」を扱う方が難しかった
開発を始めた頃は、AIにたくさんのことを答えさせようとしていました。
でも途中から、考え方が変わりました。
本当に必要なのは、
何でも答えるAIではない。
分からないことを勝手に埋めず、
「ここまでは分かっている」
「ここからは確認が必要」
と扱えるAIなのではないか。
そして必要なら、人間へ自然に相談を引き継ぐ。
考えてみれば、普通の会社員も同じです。
新人社員に、
「分からなくてもいいから、とにかくお客様へ何か答えろ」
なんて教育はしません。
分からなければ確認する。
担当者へ聞く。
必要なら折り返す。
AIがお客様の前に立つなら、AIにも同じような仕事の仕方が必要です。
電話だけ作ればいいわけでもなかった
さらに作っていくと、別の問題も出てきました。
お客様は会社に「電話だけ」で接触するわけではありません。
Webサイトを見る。
Web上のAIに質問する。
資料を見る。
その後、電話をする。
人間にとっては、全部同じ会社とのやり取りです。
だったら電話AIだけ賢くしても仕方がない。
Webで話したAIと、電話で話したAIが、まるで別の会社のように振る舞うのもおかしい。
そこで私たちは現在、Web・チャット・電話を別々のAIとして作るのではなく、
「どこから話しかけても、同じ会社と話している」
と感じられる仕組みを目指しています。
これは、単に音声AIを電話回線につなぐ話ではなくなりました。
AIが話せる時代の、その次
今はもう、
AIと自然に会話できるか
だけなら、それほど珍しいことではなくなりました。
私たちが面白いと思っているのは、その次です。
会社のことを理解している。
知らないことを勝手に作らない。
必要なら人間に聞く。
Webでも電話でも話がつながる。
そして、お客様から見ればAIであることを意識しすぎず、普通に会社へ相談できる。
そこまでできて初めて、
「会社の受付をAIに任せる」
と言えるのではないかと思っています。
だから、
「それ、ChatGPTでいいじゃん」
と言われると、私はいつも少しだけ困ります。
ChatGPTのような優れたAIがあるからこそ、私たちはこんなものを作れています。
でも、
優れたAIを使うことと、優れた企業AIを作ることは、同じではありません。
私たちが今苦労しながら作っているのは、たぶんその間にあるものです。